日本語図書案内
日本語教育 図書・教材案内 22 号 2014.09 |
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 日本語教育 図書・教材案内 22 号 2014.09 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ みなさま、いかがお過ごしですか。 第22号の「日本語教育 図書・教材案内」をお届けいたします。 書籍の表紙の画像つきのものを添付いたしましたので、そちらもご参照いただければと思います。 このニューズレターはBccでお送りしております。配信をご希望でない方は、返信の形でご連絡ください。お知り合いの先生で、興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どうぞご紹介ください。バックナンバーは香港日本語教育研究会のWebsiteでご覧いただけます。 http://www.japanese-edu.org.hk/ 1. 『日本語教育学の歩き方 初学者のための研究ガイド』 著者:本田弘之、岩田一成、義永美央子、渡部倫子 出版社:大阪大学出版会 発行日:2014年3月7日 ISBN:978-4-87259-468-3 本書は、日本語教育研究を始めて間もない、あるいは始めようとしている大学や大学院生だけではなく、長く日本語教育に携わっていらっしゃる先生方にも、研究の可能性を広げるために興味深く読んでいただけるのではないかと思います。内容は、「日本語教育研究レビュー」「日本教育研究マニュアル」「日本語教育研究ガイド」の3部に大きく分かれています。すでに研究を始めている方は、具体的に関連のある部分、例えば、第3部第11章の「質的研究の方法」のを見るという読み方もあるでしょう。また、第8章「日本研究の倫理と社会的責任」では、気をつけなければならない例、「調査協力のお願いの見本」なども挙げられています。最近日本では、研究者の倫理が問われる事件がいくつかありましたが、インターネットによって資料や情報の収集が簡単になった今、学生の研究プロジェクトなどを指導する先生方に、注意しなければならない点を再確認する参考になるかもしれません。以下に、「はじめに」に書いてある文を転載します。「・・・」は省略部分です。 『この本の執筆陣は4人とも「自分は日本語教育関係者である」と考えています。・・・この4人、それぞれの分野で粛々と研究を進めていますが、分野ごとに少しずつ違った研究のノウハウやお作法があるのです。ある日、そういったノウハウやお作法を一冊に集めて提示したら日本語教育学を志す学生のみなさんにとってきっと有益なものになるはずだと話がまとまりました。それが本書です。・・・ただ、自分の周りの世界だけが全てではなく、少し視野を広げてみれば、日本語に関するいろいろrな研究分野や研究テーマがあることに気がつくはずです。この広い分野にはどんな研究テーマが転がっているのかちょっと鳥瞰的に見てみませんか?』 本書は私のオフィスにありますので、閲覧ご希望の方はご連絡ください。 2. 『日本語社会のぞきキャラくり 顔つき・カラダつき・ことばつき』 記事の最後に、オンライン中国語版へのアクセスの方法もあります。 著者:定延利之 出版社:三省堂(http://www.books-sanseido.co.jp/)発行 書籍情報:http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/dicts/books/jp_nozoki_char/ 発行日:2011年3月31日 ISBN:978-4-385-36525-1 アニメやマンガには、「・・・でござる。」「・・・じゃよ。」など、登場人物のタイプを特定するような表現、いわゆるキャラクタ(本書では長音にしていません)表現が頻繁に使われます。著者の定延利之は言語学やコミュニケーション論が専門ですが、本書では、このようなキャラクタ表現をどのように日本語教育で扱うかを論じています。翻訳家を指導する方や学生さんの参考にもなるのではないかと思い、また、読み物としてもおもしろかったのでご紹介したいと思います。 (「そで」に書かれた説明より) 『星について学びたいと思う人は、まず、客観的な態度で星を観察しなければならない。星が自分の思い通りの位置・時刻に表れないからといって「最近の星はどうも乱れている」ということはできない。これと同じように、ことばについて学びたいと思う人は、客観的にことばを観察しなければならない。「最近のことばはどうも乱れている」と言いたいところをろえいあえず我慢して、マンガやインターネットのことばを虚心坦懐にながめると、そこに面白いものが見えてくる。・・・日本語社会はまさにキャラクタの社会である。その中で人々がキャラクタに生き、キャラクタに悩む様子をしばし、のぞき見てみよう。』 この中に、トルコの絨毯売りのエピソードが出てきます。はじめは流暢な標準的日本語で話している絨毯屋さんが、思い切った安値をつけた客に、「お客さん、そんな冷たいこと言わんといて」と、突然、関西弁に切り替えてやり返すのです。私もイスタンブールの観光ツアーに参加し、絨毯屋さんの「商売上手の関西人」キャラへの切り替えに驚いたことを思い出しました。本書では、絨毯屋さんだけでなく、ニャロメ、ののちゃん、パタリロから「細雪」の幸子婦人、「或る女」の葉子、さらには石川遼やNHKのアナウンサーなど豊富な例を挙げ、分析を試みます。 (上の文の登場人物、全部ご存知ですか。) 実はこの本はWebsiteでシリーズ的に配信されたものをまとめてできたものです。それぞれの記事は、上記の「書籍情報」で無料で見ることができます。 http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/topic/index.html を開くと、「言語」のセクションに本書へのリンクがあります。中国語版もあります! 本書は私のオフィスにありますので、閲覧ご希望の方はご連絡ください。 同じようなキャラクタ言葉に関する著作が国際交流基金の「本ばこ」で紹介されていましたので、こちらもご覧ください。 『翻訳がつくる日本語 ヒロインは「女ことば」を話し続ける』 「本ばこ」の書籍紹介は以下のリンクにあります。 http://www.jpf.go.jp/j/japanese/survey/tsushin/bookshelf/index.html 著者:中村桃子 出版社:白澤社(http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/)・発行 (現代書館(http://www.gendaishokan.co.jp/)・発売) 書籍情報: http://d.hatena.ne.jp/hakutakusha/20130805/1375674684 発行日: 2013年8月 ISBN: 978-4-7684-7951-3 C0081 教材、Websiteご紹介 1. 今回は香港日本語文化協会日本語講座の侯清儀先生から、同協会のラジオ放送番組についてのご紹介をいただきました。以下は、侯先生からいただいた文です。 『「東瀛360」はRTHKの地域団体実験計画の下に香港日本文化協会が自主制作した、30分の広東語ラジオ放送番組です。「東瀛360」のスタッフはキャスターをはじめ、出演ゲスト、録音、編集など、全員現役の日本語学習者と教師です。この番組では、出演者が実際に経験した日本の社会や文化事情を香港と比較し、港日間の異文化交流に触れ、広東語で興味深く語ります。 なお、「東瀛360」には「一語一会」という、日本語学習者によって日本語の諺を紹介するスキットもあります。第1シーズン13回分の放送はもう完了しましたが、RTHKのアーカイブにアップロードされ、いつでも聴取できるようになっております。 http://programme.rthk.hk/channel/radio/programme.php?p=6129 第2シーズンの「東瀛360」は現在放送中です。 http://programme.rthk.hk/channel/radio/programme.php?p=6348 2. 国際交流基金平成27年度の公募プログラムがアップロードされました。日本語教育、日本研究、文化芸術交流など、分野別にいろいろなプログラムがありますので、ご活用いただければと思います。 国や地域によって申請できる助成が異なりますが、「海外日本語教師短期研修」、「日本語教育指導者養成プログラム(修士課程)」など香港の先生方応募していただけるプログラムもいろいろありますのでご検討ください。 なお、プログラムによって申請資格や条件が異なりますので、このガイドラインで申請の詳細をご確認いただき、ガイドラインの巻末に「連絡先」で担当部署をご参照の上、申請できるかどうかなどを事前にお問い合わせいただきますようお願いいたします。 基金のWebsite http://www.jpf.go.jp/j/program/index.html ガイドライン(Pdfファイル) http://www.jpf.go.jp/j/program/dl/guidelines_j_2015.pdf ラジオ放送番組をご紹介くださった侯先生、ありがとうございました。
夏の疲れが出やすい時期でもあり、みなさま、どうぞ体調には充分ご注意の上、ご活躍ください。 国際交流基金 海外派遣日本語教育専門家(香港日本語教育アドバイザー) 宇田川洋子 |