日本語図書案内

日本語教育 図書・教材案内 21 号 2014.06
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日本語教育 図書・教材案内 21 号 2014.06
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みなさま、いかがお過ごしですか。

第21号の「日本語教育 図書・教材案内」をお届けいたします。
このニューズレター・メルマガはBccでお送りしております。配信をご希望でない方は、返信の形でご連絡ください。また、お知り合いの先生で受信をご希望の方がいらっしゃいましたら、どうぞご紹介ください。バックナンバーは香港日本語教育研究会のWebsiteでご覧いただけます。

http://www.japanese-edu.org.hk/


1. 
『エリンが挑戦!日本語できます。艾琳学日语 』 DVD付


著者:北京日本文化中心
出版社:人民教育出版社
発行日:2013年3月1日
ISBN:9787107259692
国際交流基金が開発した中・高校生向け日本語教材「エリンが挑戦!日本語できます。」(以下、「エリン」)に基づいた、国際交流基金北京日本文化センター(以下、JF北京)版教材です。日本版の教材は3冊でしたが、JF北京版は1冊にまとまっていて、日本版にない練習問題など加えられています。

6月21日、JF北京から松浦とも子先生、鈴木京子先生、守屋諒氏を講師としてお招きし、香港日本語教育研究会主催の講演会とワークショップが開催されました。講演は、以前この図書・教材案内でご紹介した「まるごと」の紹介と授業の実践報告、ワークショップは「艾琳学日语」の紹介とその香港での応用について考える内容でした。 

ワークショップで、JF北京版「エリン」紹介の後、「香港でこの教材が使えるか・使いたいと思うか」という話し合いをしたところ、映像もあるので見る人それぞれに気づきがあり、異文化理解に役立つだろうという意見や、練習問題や課題がいろいろあるので効果的という意見、生徒自身に「Can-do」チェックリストで「何ができるようになったか」を確認させることはとてもいいという意見もありました。一方、「エリン」は第3課で「貸して」「見せて」などのて形が使われており、文法シラバスで教えている日本語コースの場合使いにくいという意見もありました。それぞれのクラスやコースによって条件が異なると思いますが、文化理解を重視した年少者向け日本語コースで、いろいろ活用できると思います。また、自然な会話が動画付きでたくさん入っているので、聞き取り練習や会話ストラテジー能力向上用などとして、大人にも使えると思います。

JF北京版は、DVDの字幕を含め、中国語(中文)には簡体字が使われています。動画は日本版Websiteで英語訳などがありますが、繁体字版の練習問題などがあればいいというようなご意見や、ご提案などお聞かせください。どのようなレベルで何ができるか、検討してみたいと思います。

JF北京のWebsiteに、この本の情報が掲載されています。 http://www.jpfbj.cn/

この本を香港でも入手できるかどうか、ちょっと調べてみました。

(大陸の書籍を扱う書店数件に問い合わせ、「エリン」が注文可能という回答があった書店)http://countrywind.weebly.com/index.html

(オンライン) http://www.megbook.com.hk/mall/detail.jsp?proID=2071517#.U5F9A2eKCUk

書店や通販の情報はあくまでも参考です。在庫や注文、価格、送料などにつきましては、直接書店にお問い合わせいただくなどして、ご確認いただきますようお願いいたします。


2.
『漢字日本:日本人說的和你想的不一樣,學習不勉強的日文漢字豆知識』
(この本は台湾で出版されたもので、中文・繁体字で書かれています。第一日語暨文化学校の李澤森先生からご紹介いただきました。)


著者:茂呂美耶
出版社:麥田
発行日:2014年3月
書籍情報:http://www.kingstone.com.tw/book/book_page.asp?kmcode=2017310111546
ISBN: 9789863440802

(以下は李先生のコメントです)

四つの熟語から構成されている「中華人民共和国憲法」ということばの中に和製漢語が三つもあることをこの本を読んで初めて知りました。さらに読んでみると、このように日本で作られ、中国で広く使用されている語彙はたくさんあることがわかりました。

まさに著者が述べたように「ギリシャで生まれた西洋文明はローマ帝国が引き継ぎ、フランスとイギリスで華々しい発展をとげたのと同じように中国で生まれた漢字は朝鮮半島を経由して日本に伝わって、日本で新しい生命を得た」。

日本が漢字を廃止するとどうなるかについて、「蒼い」月夜、「青い」空、「碧い」海の区別がなくなり、同じ「かてい」でも「家庭」かそれとも「仮定」か、わかりにくくなって、「仮定の問題」を「家庭の問題」と誤解され、迷惑を被った例が挙げられました。

漢字に関する豆知識だけでなく、日本の戸籍法、日本の家墓のこと、関東人と関西人の性格、騎馬民族である中国人と農耕民族である日本人の違い、日本語にオノマトペが多い理由なども本書中で触れました。

興味深く一気に読んでしまう本はめったにありません。これは例外の一冊かもしれません。


3. 
『日本語教師のためのTIPS77③ 音声教育の実践』 


著者:河野俊之
出版社:くろしお出版
発行日:2014年3月3日
ISBN:978-4-87424-615-3
書籍情報:http://nihongo.9640.jp/books/TIPS/615.html

2013年3月の香港日本語教育研究会主催・日本語セミナーに講師のお一人としてお招きした河野先生の新刊です。本書は5つの章から成り、それぞれ「音声教育の実際について考えるためのTIPS」「自己モニターを活用した音声教育を考えるためのTIPS」「プロソディーの教育を考えるためのTIPS」「学習者の音声を考えるためのTIPS」「よりよい音声教育を考えるためのTIPS」という見出しがついています。

このシリーズは、TIPSというタイトルで「すぐに役立つ」ことを目的としているように見えますが、読んでみると、改めて日本語を教えるとは何かを考えさせてくれる内容です。例えば、本書の8.「『通じればよい』について考えよう」では、「日本人でもいろいろなアクセントの人がいるのだから、外国人日本語学習者に発音に関してそれほど厳しくする必要はない、通じればいいではないか」という意見を聞くが、それでいいのだろうかという疑問を投げかけます。つまり、ある場合には「通じる」程度の発音の不正確さでも、別の場合にはコミュニケーションの障害になることもあります。また、日本語教師でない人は意外に発音に厳しく、外国人の発音が不正確だと仕事能力まで疑われたりすることもあるということを考えなければならないとも書いています。これを読んで、私も教員養成講座などで「通じればいい」という発言をしたことがあることを思い出し、反省させられると同時に、発音のどこをどこまで正確にする必要があるのかを改めて考える必要があると思いました。

実践的な発音教育のTIPSも書かれています。例えば「中国語の音声と御用の傾向を知ろう「中国語話者のための練習方法を考えよう」など、母語別の発音の問題が取り合えられています。北京語(普通話)を中心に扱っているのですが、広東語、上海語、閩南語などの影響についても触れられています。さらに、シャドーイングやディクテーションなどの教授法も取り上げるなど、音声教育に関する幅広い話題が扱われています。

一方で、毎日授業でたいへんな先生方にも、ちょっと時間のあるときに読めるような構成になっています。

それぞれの話題は4ページ程度と短く、順を追って読む必要もないので、興味や必要性によってあちこち呼んでも充分役立ちます。私自身は一通り読んでよかったと思いましたが・・・。



第10回国際日本語教育・日本研究シンポジウムについてのお知らせ


2014年11月15, 16日に、香港大学専業進修学院で国際日本語教育・日本研究シンポジウムが開催されます。発表申し込みの締め切りは7月15日です。みなさまのご参加をお待ちしております。

詳細は以下のWebsiteをご参照ください。
http://www.japanese-symposium.com/cms/index.php/jp/ 



李澤森先生、本のご紹介ありがとうございました。みなさまからも、教材や教科書、図書のご推薦をお待ちしております。

今回も、いろいろ異なる分野の本を探してみました。ご紹介した本はいずれも私のオフィスにありますので、閲覧ご希望の方は、まずはご連絡をお願いいたします。 
ところで、みなさんは暑いときに特に食べたくなるものがありますか。私は本来はアイスクリーム党なのですが、最近、あんみつがマイブームです。
それでは、また、次号でお会いしましょう!

国際交流基金 海外派遣日本語教育専門家(香港日本語教育アドバイザー)
宇田川洋子