日本語図書案内

日本語教育 図書・教材案内 20 号 2014.03
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日本語教育 図書・教材案内 20 号 2014.03

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前回19号でクリスマスのご挨拶をしたと思ったら、あっという間に旧正月も過ぎ、もう3月!日本では、さくら前線の予想と花粉症の話題が聞かれる季節となりました。みなさまはいかがお過ごしですか。
第20号の「日本語教育 図書・教材案内」をお送りいたします。
みなさまにはBccでお送りしております。このニューズレターの配信をご希望でない方は、このメールに返信の形でご連絡ください。



1. 
『日本留学試験 試験問題』 音声CD付


著者:日本学生支援機構(JASSO)
出版社:凡人社
発行日:毎年2回発行
書籍情報はこのサイトで:http://www.bonjinsha.com/product/?item_id=5816
  この試験は、これまで日本の大学などへの入学の際義務付けられていた日本語能力試験や私費外国人留学生統一試験に代わるものとして、2002年から実施されています。2013年には、741の大学(国立・私立・公立合計)のうち56%の412校が、また、高等専門学校57校のうち89%の51校が、日本留学試験の成績を利用しているそうです。また、世界では17の都市で実施されています。
 香港でも、年2回、香港日本文化協会で受験することができます。受験者数も、香港で初めて実施された2010年の第2回には12名でしたが、回を追うごとに、60名、114名、188名と増加しています。香港での実施に関しては以下のサイトをご覧ください。
http://www.nihongokoza.edu.hk/web/eju.html
 試験の構成は、日本語では、「日本語」「理科(物理・化学・生物)」「総合科目(公民・地理・歴史の分野から出題)」「数学」の4科目、英語はScience(Physics, Chemistry, Biology), Japan and the World, Mathematicsの3科目です。受験者はこの中から、入学したい大学が利用する科目を選んで受験することになります。例えば理科と総合科目はどちらか一つを選んで受験します。2010年の試験問題もダウンロードできます。
http://www.jasso.go.jp/eju/
そのほかのこの試験に関連する出版物のリストは以下のページにあります。
http://www.jasso.go.jp/eju/publish.html
 高等教育レベル進学のための試験ですので、上級レベルです。日本語試験には、記述問題や、科学的な説明文の読解問題や、講義の理解力を測るような聴解問題などもあります。
 この本は、学習者だけでなく、日本語教師の皆さんにも、最近の大学入試について理解を深めるためだけでなく、総合科目などに挑戦してみることをお勧めします。ちょっと例を挙げてみましょう。
問題1:公共事業を積極的におこない、需要を創出するという経済政策の重要性を訴えた学者は、①スミス②ケインズ③ハイエク④フリードマンのうち誰でしょう?
問題2:世界の大陸のうち、2番目に人口の多いのは、どの大陸でしょう?
 なお、この試験に関しては本書のほか、参考書もいろいろ出版されています。

2.
『ビジネスコミュニケーションのためのケース学習 職場のダイバーシティで学び合う【教材編】』


編著者:近藤彩、金孝卿、ムグダ ヤルディー、福永由佳、池田玲子
出版社:ココ出版
発行日:2013年7月
書籍情報:http://www.cocopb.com/cocobooks/booksinfo/エントリー/2013/7/16_ビジネスコミュニケーションのためのケース学習【教材編】.html
ISBN: 978-4-904595-37-4
「日本国内でも国外でも、様々な文化や背景を持った人たちが共に働く場が増えています。そこでは、喜びと同時に誤解や摩擦が生じます。それぞれの力を発揮し、お互いを大事にしながら共に働くには、問題解決の方法を自分で考える力を持つことが大事です。
 本書は、日本語を使って仕事をする(したい)人が、人間関係を上手に保ちながら、問題解決できるようになることを目指した教材です。今後、本書に続いて「ケース学習」の概念や授業実践例などを紹介する【解説編】が出版予定です。」(国際交流基金ウェブサイト「日本語教育通信」『本ばこ』より)
 1つ例を挙げてみましょう。「日本企業の下請け会社であるインドのIT関係中小企業のエンジニアが、それでなくても厳しい納品の期日に間に合わせようと努力しているのに、さらに中間の日程で一度チェックしたいと日系企業側に言われて・・・」という場面が設定されています。学習者は、まず、インド側と日系企業側それぞれの登場人物場の気持ちを考え、問題点を抽出し、自分自身の経験を振り返って、このケースの場合にどのように対処するかを考えます。それから、ペアでのディスカッションに入ります。その後、自分の考えをもう一度修正してから、全体での意見交換になります。正解はありませんが、最後に、「ケースの裏側」として誤解が生じた原因を考える文化比較のような文章があります。このように、日本や日系企業で働く人々が遭遇しそうなさまざまなケースが10挙げられていますが、日本人である私にもどうしたらいいか考えさせられてしまうような例もいくつかありました。本書は、日本と香港の人たちが交流するイベントやディスカッションの場での話題のきっかけとしても、使えるような気がします。
 それぞれの事例に含まれている語彙リストも、職場やビジネスで必要な語彙などがたくさん入っていて、参考になると思います。また、巻末には中国語(簡体字)と韓国語の語彙リストもあります。
 香港のN1取得レベルの方数人にこの本を見た感想をお聞きしたところ、たいへんおもしろいが、それぞれの事例について解説が読みたい!ということでした。調べてみましたが、「解決編」は、まだ、出版されていないようです。出版されましたら、また、みなさんにご紹介したいと思います。

3.
『群読 実践シリーズ 楽しい群読 入門』 音声CD付


企画:日本群読教育の会
編著:重水健介
出版社:高文研
発行日:2012年10月
書籍情報:http://www.koubunken.co.jp/0450/0439.html

 群読という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
 私がこの言葉を発見したのは、香港日本語教育研究会が実施している小中高校生のためのスピーチコンテストで今年から「朗読劇」の部ができたことから、日本の小学校などでは学芸会などでどのような活動を実施しているのか調べているときでした。
 群読というのは、詩歌や物語、古典、英文、わらべ歌などさまざまな文章を大勢で読む活動を言うもだそうです。そう考えると、呼び方はご存じなくても、小学校や幼稚園の学芸会で経験したことがある方は結構いらっしゃるのではないでしょうか。また、小学生だけでなく、本書を見ると、「人権集会群読」など、大人の群読の例もあるようです。
 群読は、日本語学習の成果をステージで披露するのにも役立つかもしれません。観客が多い場所で披露するには、集団の息の合った声がパワーになるでしょう。編著者は「大勢で声を合わせることで集団の理念を共有したり、連帯感を深めたりすることができる」と言っています。
 群読②関連した出版物はいろいろあるようですが、今回は「入門」をご紹介してみました。
 
 インターネットで探してみると、動画もいろいろありました。いくつか挙げておきます。
小学生  http://www.youtube.com/watch?v=rG5uBKpmX7Q
小学生  http://www.youtube.com/watch?v=WDAfPyuiMhI
小学生  http://www.youtube.com/watch?v=mxVebl3S-bo (「雨ニモマケズ」朗読全国大会 大賞受賞)
中学生  http://www.youtube.com/watch?v=ag45UvdO7b0 (最初の2分ぐらいは群読ではありません)

今回ご紹介した出版物はいずれも私のオフィスにあります。閲覧ご希望の方は、どうぞメールでご連絡ください。

みなさまからの教材や教科書、図書のご推薦、お待ちしております。日本語教育のために作られた本でなくても、授業での活用方法のアイデアなども添えて、ご紹介いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

 

国際交流基金 海外派遣日本語教育専門家(香港日本語教育アドバイザー) 宇田川洋子