日本語図書案内

日本語図書案内 8号 20101201
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日本語図書案内 8号 20101201
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今年は猛暑だったせいで、紅葉がきれい!!キノコが豊作!!!というニュースが日本の友だちから届きました。 師走に入り、日頃の忙しさに加えて、試験やいろいろな行事の準備で目の回るような日々を過ごされていらっしゃることと思います。
 
今回は試験の話題と図書とサイトのご紹介です。
 
1.  新しい日本語能力試験 について
 
(1)得点の出し方
  新しい日本語能力試験の得点の出し方について受験者のみなさんから質問があると思います。そのような場合にはこのメールの一番最後の部分にある試験センターからの補足説明の内容をお伝えください。
  また、試験の専門家にも聞いてみましたが、次のように教えてくださいました。
  「推定された能力値が得点区分の最高得点=リミット(60や120)を超えていればその人の得点は60、120となります。そのため、合計点(180)にしたときでも何問か間違っていても180点ということはあり得ます。逆に、何問か正答していても0点ということもあり得ます。」
  「試験対策講座などで本試験に近い採点方法をとろうとした場合、どのように計算したら本試験に近い状況ができますか。」という木山の質問に対しての回答は以下です。
  「基本的に外部の方が尺度得点を復元することはできません。できることは,新試験の実受験者に聞き取り調査をして,「何割できた人が何点だった」という対応表を作ることでしょうか。」とのことでした。
 
(2)Can-do
  2010年に、新しい日本語能力試験が始まり、また、『JF日本語教育スタンダード2010』が公開されたので、この二つに直接的な関係があると理解されている方もいらっしゃるようですが、『JF日本語教育スタンダード2010』をもとに試験が作成されたという理解は正しくありません。
  新しい試験は、過去の日本語能力試験の問題の問題および結果分析、さらに受験者層を分析して、開発されました。その際に理論的に支えとなったのは、バックマン&パーマー(1996)です。新試験の構成概念については、2009年9月の『日本語学』(明治書院)の「新しい『日本語能力試験』-構成概念の構築と新しいレベルの設定―」の中にまとめがあります。
  課題遂行能力は、主に読解、聴解の部分で測られています。試験の準備として『JF日本語教育スタンダード2010』の言語活動カテゴリーの「受容」「やりとり」のCan-doを参考に勉強することは、個人的にはいい方法だと思いますが、これらが試験問題開発に利用されたというわけではありません。
 
 
 2.新刊案内 
 
(1)『 日本語これだけ!』 庵功雄 監修 (ココ出版) 1050円
 ゼロ初級の人でも、おしゃべりを楽しみながら、学習できるように、と開発された教材です。
 日本国内に住む外国人の方とボランティアで教える人の個人教授を想定して作成された教材ですが、香港で個人教授をしている先生方にもたいへん参考になる教材です。
 活動に組み込まれた「隠れ文法」により、自然に文型を習得できるようになっています。文型一覧や50音図を掲載した「したじき」など、先生を応援のするアイディアが満載。活動を通じて先生側も「やさしい日本語」が使えるようになります。
 サポートサイトがあります。活動例の動画もあります。 http://www.cocopb.com/koredake/
 
3.授業準備に使えるウェブサイト
 (1)公益社団法人 国際日本語普及協会(AJALT) のホームページ
http://www.ajalt.org/
  AJALTは、『Japanese for busy people』や『Japanese for young people』を開発してきたところとして知られています。
  このホームページで年少者向け教材『ようこそ!さくら小学校へ』のサンプル動画が見られます。この教材は、日本の小学校に入る外国から来た子どもたちや保護者のみなさんが言葉や日本の小学校の習慣を知るために開発された教材ですが、香港で日本語を学習している小学生のみなさんが日本の小学校の様子を知るのに役に立つと思います。
  このほか、オンライン教材もあります。http://www.ajalt.org/online/online.html
『人形で教える日本語』には年少者に教えている先生方へのヒントがたくさんあります。
 
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(^o^)今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。みなさんからの感想やリクエストをお待ちしています。
 「☆☆日本語図書案内☆☆」のバックナンバーは、香港日本語教育研究会のホームページから見ることができます。

 (木山)
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試験センターからの補足説明
 
 受験した人の日本語の能力を、より正確に表すため、得点の出し方を変えました。新試験では、これまでのような「いくつ正解したか」に基づく「素点」ではなく、「いまのみなさん一人一人の能力がどの位置にあるか」を表す「尺度得点」で得点を出します。
 試験問題は、どんなに注意して作っても、試験の回によって難しさが少しずつ変わります。このため、正解の数に基づいて計算する「素点」では、試験が易しいときと難しいときで、同じ能力の人でも得点が違ってきます。新試験では、試験問題が全体として難しかったか易しかったかに関係なく、どの回の試験でも、「同じ能力」の人であれば「同じ得点」になるしくみに変えました。これを「尺度得点」といいます。
尺度得点では、「言語知識」、「読解」、「聴解」のそれぞれの能力を測り、0~60の目盛りがある尺度(ものさし)上で得点として示します。「総合得点」はこの3つを合計したものです。同じレベルの試験の得点は、いつも同じ尺度(ものさし)で計算します。
 新試験では、みなさんの今の日本語能力を、この共通の尺度(ものさし)で測るため、みなさん一人一人が、どのような問題にどのように解答しているか(正解したかまちがったか)を調べて、得点を計算します。ですから、たとえば聴解試験で正解した数が同じ人がいても、正解した問題が違う場合には、得点も違う得点になります。このように尺度得点では、いくつ正解したかがそのまま得点にはなりません。